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VOICE Vol.30

正しい知識で「酸関連疾患」と向き合う

胃酸が関係して起こる病気は「酸関連疾患」と呼ばれ、胃酸を含む胃の内容物が胃から食道へ逆流することで食道炎や様々な症状が生じる胃食道逆流症(GERD[ガード])と、胃潰瘍や十二指腸潰瘍があります。
これらの酸関連疾患は大人だけではなく、赤ちゃんから思春期まで、幅広い年齢のお子さんにも起こりうる病気です。今回は、小児消化器病のエキスパートとしてたくさんのお子さんを診療しておられる信州大学医学部 小児医学教室 講師の中山佳子先生に、小児の酸関連疾患についてお話を伺いました。

どのような症状があらわれるのですか?image

小児の酸関連疾患は産まれたばかりの新生児から青年期の方まで幅広く見受けられます。新生児から生後6ヵ月ごろの新生児・乳児が溢乳[いつにゅう](母乳やミルクの吐き戻し)や嘔吐を繰り返すことは、健康な赤ちゃんでもよくあることですが、溢乳や嘔吐に加えて食道炎の傷から出血することで吐血や貧血を起こす、哺乳不良によって体重増加が不良になる、咳やゼーゼーするというような呼吸器症状が出ると病院の受診が必要なGERDの症状と考えます。GERDの場合には、時に慢性的な食道炎のために、食道が細くなって食べ物などの通りが悪くなることもあります。成人のGERDでは、胸やけと呑酸が典型的な症状ですが、小児では腹痛や嘔吐が主な症状であることが多いです。一方、小児の胃潰瘍、十二指腸潰瘍は、腹痛や嘔吐ではじまり、時に吐血、タール便(黒色便)を伴うことがあります。成長期の小児の酸関連疾患では、診断が遅れると身長や体重の伸びが悪くなる成長障害を合併します。
また、成長期にある小児の酸関連疾患では食欲が低下したり、元気に遊べなくなることがあります。ご家族もお子さんの体調に合わせて外出を控えたり、いつ吐いてしまうかわからないという不安をお持ちになられているようです。お子さんだけでなく、ご家族のQOLも低下してしまっているといえます。

診断について教えてください。image

まず、どのような症状があるかという詳しい問診と、成長障害や貧血などの身体所見がないかの診察を行います。小さなお子さんでは症状を言葉にして訴えることはできませんが、例えば、顔をしかめて苦そうな顔をするなど、お母さんがお子さんの元気な時と違うと感じていらっしゃることをよく聞くようにしています。また、GERDの場合、1歳未満の赤ちゃんでは哺乳障害や繰り返す嘔吐が多いのですが、ミルクの吐き戻しは生後1ヵ月ほどの乳児に多く認められる生理現象でもあります。吐いたものに血が混じっていないか、体重増加不良や貧血がないかもよく確認します。
そのうえで、酸関連疾患が疑われる場合には、超音波検査(エコー検査)を行うことがあります。超音波検査は鎮静(お薬を注射して眠たい状態にする)や麻酔の必要がなく、放射線の被ばくもないため、お子さんにはとても適しています。100%ではありませんが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発見したり、胃の内容物が食道に逆流しているのを確認できることもあります。また、内視鏡検査は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎が強く疑われる場合、食べ物がつかえる感じ、出血や貧血などがある場合に実施をおすすめしています。

小さなお子さんでも内視鏡検査はできますか?image

内視鏡検査は、産まれてすぐの新生児から実施することができます。通常、お子さんの内視鏡検査は細い内視鏡を使って、苦痛なく安全に検査を終わらせることを大切にしています。鎮静や全身麻酔をかけて眠っている間に検査が済むようにしていますが、これは、体を動かさないようにするということに加えて、内視鏡検査がすごく辛かったという心理的なトラウマを残さないようにするためでもあります。
また、内視鏡検査を受けるお子さんを対象に行ったアンケートでは、検査後に辛かったこととして最も多かったのは「ご飯が食べられなくてお腹がすいた」でした。検査前には、「検査が終わるまで食事が摂れないので辛いかもしれないよ」というように、お子さんに合わせた検査の説明を行うようにしています。

治療について教えてください。image

GERDの乳児に対してはミルクを一度に飲ませすぎない、げっぷをしっかりさせるなどの生活指導を行った後、とろみのついた増粘ミルクや、ミルクアレルギーが疑われる場合にはアレルギー用のミルクの使用をおすすめします。幼児期以降では、食べ過ぎや急激な体重増加がある場合には生活習慣の指導をします。こうした対応で改善しない場合にお薬による治療を考慮します。一方、胃潰瘍や十二指腸潰瘍はピロリ菌の感染や潰瘍を起こしやすい薬剤の服用など、原因をしっかりと見極めたうえで、原因に対する治療と、潰瘍を治すためのお薬の服用を行います。
GERDや潰瘍に対する主な治療薬は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2ブロッカーという胃酸の分泌を抑えるお薬ですが、まずは小児適応があるお薬から服用してもらうようにしています。

酸関連疾患かもしれないとお考えのお子さんをお持ちのご家族へアドバイスをお願いします。image

酸関連疾患の症状として多い腹痛や嘔吐、吐き気は、普段からお子さんが訴えることの多い症状です。原因がわからず長い間悩んでおられるご家族もいらっしゃいます。受診される際には、お子さんの身長や体重が成長曲線に沿っているか、吐いたものに血が混じっていないか、便の色、食欲などについても医師に教えていただければと思います。小学生以上のお子さんであれば、まずはお子さん自身で医師に症状を伝えてもらうこともポイントになると思います。ご家族の方がお子さんより先に一生懸命に症状を伝えてしまうと、ご家族の心配のし過ぎという誤解を医師に与えてしまうかもしれません。
お腹が痛い、よく吐く、しかし原因がはっきりしないという場合には、年齢やストレスのせいと片づけてしまわないで、もしかしたら酸関連疾患があるかもしれないと考えて医療機関にご相談頂くことが大切ではないかと思います。

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総監修 中山 佳子(なかやま よしこ)先生
信州大学医学部 小児医学教室 講師、
日本小児科学会(認定小児科指導医)、
日本小児栄養消化器肝臓学会(認定医)、
日本小児アレルギー学会、日本消化器病学会(指導医)、
日本消化器内視鏡学会(指導医)、
日本消化管学会(胃腸科暫定指導医)、
日本へリコバクター学会(ピロリ菌感染症認定医)、
日本カプセル内視鏡学会(認定医)、
日本感染症学会、
日本家族性腫瘍学会
1992年信州大学医学部医学科卒業。
1995年市営伊那中央病院小児科、
1998年昭和伊南総合病院 小児科・消化器病センター勤務を経て、
2010年信州大学医学部附属病院 小児科 助教。
2014年より信州大学学術研究院医学系 学部内講師(医学部)、
2016年 同講師。
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