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VOICE Vol.22

正しい知識で「逆流性食道炎」と向き合う

「胃食道逆流症(GERD[ガード])」は、近年日本で増えているとされる病気の一つで、GERDの中でも食道に傷ができたものを特に「逆流性食道炎」と呼んでいます。
今回は、GERDの原因や治療法、内視鏡検査の重要性などについて、川崎医科大学 消化管内科学 教授の塩谷昭子先生にお話を伺いました。

GERDはどうして起こるのでしょうか?

胃食道逆流症(GERD[ガード])は胃液が食道に逆流することによって起こる病気です。胃の中には非常に強い酸が分泌されていますが、通常は、胃と食道の境目は下部食道括約筋によって締められているため、胃液は食道へは流れず、十二指腸へ流れていく仕組みになっています。しかし、何らかの原因で下部食道括約筋がゆるんだり、食道裂孔ヘルニア(胸部と腹部を隔てている横隔膜を超えて、胃が胸部のスペースにはみ出してしまう病気)になると、胃液が食道に逆流して様々な症状を引き起こします。代表的な症状は胸やけ(胸が熱くなるような感じ、胸の不快感)や酸っぱいものが上がってくるような症状ですが、咳や喉の違和感を訴える患者さんもいます。

どんな人がかかりやすいのでしょうか?image

高脂肪食や過食といった食生活の方、食べた後にすぐに横になってしまう方、肥満の方はGERD症状を起こしやすくなります。以前は、ピロリ菌が胃の中にいることで胃炎を起こし、胃酸の分泌が減っている方が多かったのですが、現在ではピロリ菌の除菌治療が進んだことで胃酸の分泌が保たれている方が多く、そこに食生活や生活習慣の欧米化など逆流しやすい要素が加わることでGERD患者さんが増えてきています。
ほかに、食道裂孔ヘルニアを起こしやすい背中の曲がった高齢者もGERD症状を起こす場合があります。

日常生活には影響はありますか?image

GERDの症状が原因で夜ぐっすり眠れない、朝方に胸の不快感で起きてしまうなど、睡眠障害を訴える方もいて、睡眠不足が翌日の仕事の効率を低下させてしまうこともあります。また、咳や喉の違和感で生活の質(Qua- lity of Life)が低下していると感じる方もいます。

内視鏡による検査について教えてください。image

食道がんなど、GERDと同じような症状があらわれる他の病気を除外するためにも、一度は内視鏡検査を受けることが重要です。また、GERDの中には食道粘膜にできた傷の程度がひどくても症状が軽い方、それとは反対に傷の程度は軽いのに症状が強い方がいます。適切な治療を行うためにも、食道粘膜の傷の程度を確認しておくことが大切です。食道粘膜の傷は胃がん検診で受けるようなバリウム検査では確認することが難しいため、内視鏡検査による評価が基本になります。

治療について教えてください。image

治療の目標は、症状を取り去って患者さんのQOLを改善すること、そして食道にできた傷を治すことです。
治療では生活習慣の改善も大切です。肥満の方にはまず体重を減らしていただくようにします。また、夜の食事から寝るまでの時間が短いと症状が出やすくなるため、できるだけ早い時間に夕食をとっていただき、就寝するまでの時間を空けてもらうようにします。仕事の都合で難しい場合には、夕食と朝食のボリュームを振り替える、つまり朝をしっかり食べて夕食を軽くするように工夫していただければと思います。過食を避けること、洋食よりは和食に、インスタント食品や外食よりは家庭料理にしていただくこともポイントです。

薬による治療と、注意点について教えてください。image

胃酸の分泌を抑える薬を中心的に使います。患者さんの中には、症状がよくなると、途中でお薬を飲まなくなる方がいますが、そのような方の多くは病気が再発してしまいます。特に注意しなければいけないのが、食道の傷の程度がひどい重症の逆流性食道炎の患者さんです。このような患者さんは症状が軽いことが多く、自己判断で治療を中止してしまい、知らない間に傷から出血して貧血を起こしたり、傷ができたり治ったりを繰り返すことで食道が狭くなって食べ物が通らなくなったりすることがあります。症状がよくなったとしても、自己判断で薬を止めるのでなく、主治医の先生にしっかり相談していただくことが大切です。

胸やけなどのGERD症状でお困りの患者さんにアドバイスをお願いします。image

すでに医療機関にかかって治療を受けている方は、主治医の先生にきちんと症状を伝えていただくということが重要です。なぜならば、症状に対する医師の評価と患者さんの評価は異なっていることがあり、症状の程度を主治医に正しく把握してもらうことは、GERDの治療においてとても大切なことだからです。
また、まだ医療機関にかかっていない方は、最適な治療を受けるためにも、消化器専門医を受診し、一度は内視鏡検査を受けていただくことをおすすめします。

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総監修 塩谷 昭子(しおたに あきこ)先生
日本内科学会総合内科専門医・指導医、
日本消化器病学会指導医、日本消化器内視鏡学会認定指導医、
日本医師会認定産業医、日本消化管学会指導医胃腸科認定医、
日本ヘリコバクター学会H.pylori感染症認定医、日本カプセル内視鏡学会指導医
1986年和歌山県立医科大学卒業、1988年同大学内科学第2講座。
1992年米国ミシガン大学消化器内科 Post Doctoral Research Fellow。
1995年和歌山県立医科大学内科学第2講座。
米国ベーラー大学消化器内科research assistant、米国デューク大学客員教授などを経て、
2006年川崎医科大学 内科学 食道・胃腸科(現・消化管内科学)講師。
2015年より現職。
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