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VOICE Vol.25

正しい知識で「逆流性食道炎」と向き合う

「胃食道逆流症(GERD[ガード])」は患者さんにとって辛い症状を引き起こす消化器の病気で、食生活や環境の変化などによって患者数が増えています。今回は、内視鏡のエキスパートである東京医科大学病院 消化器内視鏡学分野 主任教授の河合隆先生に、GERDの原因や治療、
内視鏡検査の重要性などについてお話を伺いました。

GERDとはどのような病気ですか?image

GERDは、胃と食道の境目(下部食道括約筋)から上の食道側に胃液が逆流することによって起こる病気です。GERDには、内視鏡検査で食道に傷が確認できる場合(逆流性食道炎)と、傷が無く症状だけを感じる場合があります。
通常、下部食道括約筋は食べ物が食道から胃へ落ちる時にだけゆるみ、それ以外の時には締まって逆流を防いでいますが、アルコールの摂取など何らかの原因で下部食道括約筋がゆるんだり、食道裂孔[しょくどうれっこう]ヘルニア(胸部と腹部を隔てている横隔膜を超えて、胃が胸部のスペースにはみ出てしまう病気)になったりすることでGERDが発症すると言われています。

GERDの患者さんは増えていますか?image

私が医師になって30年以上が経ちますが、昔に比べると逆流してしまう方がずいぶん増えたという印象です。その代表的な理由がピロリ菌感染率や食事の変化です。今の40代以下の若い世代はピロリ菌に一度も感染したことのない方が多く、小さな頃から胃酸に十分にさらされている状態が維持されてきました。また、食事の内容は昔に比べると肉や揚げ物が多く、これらの食事を消化するためにたくさんの胃酸が分泌され、胃酸の量が多くなれば逆流しやすくなります。若い世代は小さい頃からの度重なる逆流によって下部食道括約筋がダメージを受け、さらに逆流しやすい状態になっていると考えられます。つまり、現代の日本は、誰にでも逆流が起こりやすい環境にあるため、今後、GERDは若い方にも増えていく病気だと思います。

どのような症状があらわれるのですか?image

GERDに特徴的な症状は胸やけや呑酸[どんさん](酸っぱいものが口の中に上がってくる状態)で、喉の違和感を訴える方もいらっしゃいますが、私が診ている患者さんに最も多い症状はみぞおちの辺り(心窩部)の違和感や不快感です。一日中、思い出す度に嫌な感じがする状態はとても辛いですし、こうした症状からがんなどを心配して不安感を抱える方もいらっしゃいます。また、夜、寝ている間は、唾液と一緒に逆流した胃液を胃へ流し込むという嚥下が少なくなりますから、胃液が食道にとどまることで症状が出て、睡眠障害になるということもあります。このようにGERDが引き起こす症状は患者さんの生活の質を低下させてしまいます。

治療について教えてください。image

患者さんにとって辛い症状を改善することが治療目標の一つです。まずは生活習慣の改善ですが、食べ過ぎないようにすること、肥満の方は少し痩せるようにすること、お酒を控えることなどが大事です。特に寝る前のお酒は最もよくありません。
お薬を使った治療では胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)などが使われます。GERDは症状の改善までに時間のかかることがありますから、治るまではしっかりと服用を続けていただくことが大切です。また、お薬の効果が十分に実感できない場合には、食後から食前の服用に変えるなど服薬タイミングの変更が有効なこともありますので、主治医の先生に相談されるとよいでしょう。

内視鏡検査は必要ですか?image

やはり内視鏡検査は一度は受けていただきたいと思います。まず、がんなどの悪性疾患ではないことを確認すること、そして食道の傷の有無とその程度を確認しておくことが、その後の治療を考える上でもとても大切です。ストレスもGERDの原因の一つと言われていますから、「がんではない」ということがわかるだけでずいぶんと症状が良くなる方もいます。

GERDの症状でお困りの方へのアドバイスをお願いします。image

胸やけや呑酸、みぞおちの辺りの不快感がある方は、まずは医療機関を受診して相談していただきたいと思います。そして一度は内視鏡検査を受けていただくことをおすすめします。内視鏡検査に対して、「苦しい」「辛い」といったイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、チューブの細い経鼻内視鏡は痛みや不快感が軽減され、検査中に会話をすることも可能です。また、経口内視鏡の場合にも麻酔(鎮静剤)を使うことで検査時の苦痛を少なくすることができます。患者さんそれぞれに合った内視鏡検査の方法は必ずあります。ご自身の体の状態を詳しくチェックするという意味でも、ぜひ内視鏡検査を受けていただきたいと思います。

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総監修 河合 隆(かわい たかし)先生
東京医科大学病院消化器内視鏡学分野 主任教授
日本消化器病学会学術評議員/専門医/指導医、
日本消化器内視鏡学会社団評議員/専門医/指導医、
日本消化管学会理事/胃腸科専門医/認定医/指導医、
日本ヘリコバクター学会理事/ピロリ感染症認定医
1988年東京医科大学大学院卒業。1999年同講師、
2005年同助教授、2008年より東京医科大学病院 消化
器内視鏡学分野 主任教授。
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