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VOICE Vol.23

正しい知識で「逆流性食道炎」と向き合う

胸やけ・呑酸などの症状を引き起こし、患者さんの日常生活にも影響を及ぼす「胃食道逆流症(GERD[ガード])」は、近年日本人に増えている病気の一つです。今回は、GERDの原因や治療法、医療機関受診時のアドバイスなどについて、GERD診療のエキスパートである秋田大学大学院医学系研究科 消化器内科学・神経内科学講座 教授 飯島克則先生にお話を伺いました。

GERDとはどのような病気でしょうか?

胃食道逆流症(GERD[ガード])は、胃酸を中心とする胃の内容物が食道内に逆流して、胸やけをはじめとするさまざまな症状を引き起こす病気です。逆流が起きるのは、胃と食道の境目の筋肉である下部食道括約筋が緩んでしまうためですが、その原因はいくつかあります。
まず挙げられるのは生活習慣、なかでも食習慣です。一度に食べる量が多かったり、脂肪分の多い食物を摂ったりすることで、下部食道括約筋[かぶしょくどうかつやくきん]が緩みやすくなります。また加齢に伴う下部食道括約筋の衰えや、肥満がある場合も、胃から食道への逆流が起こりやすくなります。

GERDと逆流性食道炎は異なる病気なのでしょうか?image

胃酸は非常に強い酸性です。食道への逆流が繰り返されると胸やけなどの症状を起こしたり、食道の粘膜が傷ついて炎症を起こしたりします。自覚症状のみで、食道の粘膜に傷がない場合は非びらん性GERD(NERD[ナード])、傷のある場合はびらん性GERD(逆流性食道炎)と呼ばれ、この2つの病態を総称してGERDと呼びます。

どのように診断されるのでしょうか?image

胸やけと呑酸[どんさん](酸っぱいのが口の中に上がってくる状態)はGERDの典型的な症状ですので、通常これらの症状があればGERDと診断されます。必要に応じて内視鏡検査を行い、食道粘膜にびらんがある場合は、逆流性食道炎と診断されます。
GERD治療の目標としては、まず症状を無くして患者さんを辛い症状から解放することが重要ですので、びらんの有無に関わらず治療を開始します。GERDは時として、狭心症とまぎらわしい胸の痛みや、咳などの症状を引き起こす場合があります。このような場合、他の病気である可能性が否定できないため、心電図や胸部レントゲンなどの検査を行い、それらが除外された場合にGERD治療を考慮することになります。

GERD患者さんは増えているのでしょうか?image

GERD患者さんは今も増えており、その背景には胃がんのリスク因子として知られているピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)感染率低下が考えられています。健康な日本人300人余りを対象に、1995年と2014年での胃酸分泌量を比較した私たちの研究では、患者全体では胃酸分泌の増加はみられなかったのですが、ピロリ菌の感染者と非感染者に分けて比較すると、いずれの時点でも、ピロリ菌感染者に比べ、非感染者では、2倍程度の高い胃酸分泌量がみられました。ピロリ菌非感染者はこの20年間で増えており、なかでもGERDが発症しやすい50歳前後の方のピロリ菌感染率は、近年大きく低下していますので、これがGERDの増加につながっていると考えられます。

日常生活にはどのような影響があるのでしょうか?image

胸やけなどの症状があると、すっきりした状態と違って仕事などに集中できず、活動性の低下がもたらされる可能性が考えられます。また、重症化したり、夜間の酸逆流による睡眠障害などが起きると、患者さんの生活の質は大きく低下してしまいます。

どのような治療が行われるのでしょうか?image

GERDと診断された患者さんには、プロトンポンプ阻害薬(PPI)等による薬物治療を開始し、同時に生活改善の指導をします。生活改善のアドバイスとしては、過食を避けることと、胸やけ症状をもたらす食品は人によって異なるのですが、脂肪食やあんこなどの甘食、柑橘類などは原因になりやすいので食べ過ぎないこと。また、夕食後すぐに横になることを避けることです。目安として食後3時間程度は起きていることが望ましいです。これを守るのが結構難しいですが、横になると逆流しやすくなりますので、守っていただくように指導しています。
逆流性食道炎は人間ドックなどの内視鏡検査でみつかることも多いのですが、そのようなケースでは、まず生活改善の指導をし、それでも効果が得られない場合は薬物治療を考慮します。

胸やけなどの症状で悩む読者の皆さんにimage

GERDのさまざまな症状は、薬物治療で改善が期待できます。胸やけですっきりしないし、何だか仕事にも集中できない、といった悩みをお持ちの方は、それを改善する治療法があることを知っていただき、まずは医療機関を受診していただきたいと思います。適切な治療により症状がなくなると、すっきりとした感覚で快適な生活を送ることができるようになることを体感していただけるでしょう。
受診の際には、どれぐらいの頻度で胸やけが起きるか(週に数回、毎日など)、どういう時に症状が出るか(食後、甘いものや油っこい物を食べた後、お酒を飲んだ翌朝、夜間、昼間など)、内視鏡検査をしたことがあるか(した場合はいつ頃か)などを医師に伝えていただくと、診断の助けになります。

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総監修 飯島 克則(いいじま かつのり)先生
秋田大学大学院医学系研究科 消化器内科学・神経内科学講座教授、
日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医
1992年東北大学医学部卒業、1992年福島県いわき市立磐城共立病院内科で研修の後、
1999年東北大学医学研究科大学院卒業。1999年帯広第一病院内科勤務。
1999年英国グラスゴー大学留学の後、2001年磐城共立病院消化器内科を経て、
2002年東北大学病院消化器内科医員、2004年消化器内科助手(助教)、2012年消化器内科講師。
2015年より秋田大学大学院医学系研究科 消化器内科学・神経内科学講座教授。
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