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VOICE  Vol.12

正しい知識で「機能性ディスペプシア」と向き合う

ストレス社会といわれる現代では、生活を送る中で様々な胃の症状を感じることがあります。
胃もたれ、胃の痛みを主な症状とする機能性ディスペプシアの原因と診断・治療に関して、
機能性ディスペプシア診療ガイドラインの作成委員長を務められた兵庫医科大学 内科学 消化管科 主任教授の三輪洋人先生に伺いました。

機能性ディスペプシアとはどのような病気でしょうか。

胃潰瘍や胃がんといった目に見える明らかな病気が認められないにも関わらず、胃の働き、つまり胃の機能に問題があり、胃もたれ、すぐにお腹がいっぱいになる早期満腹感、胃の痛みといった症状が、慢性的にあらわれる場合を機能性ディスペプシアといいます。「慢性的」ということが1つのポイントで、機能性ディスペプシアの患者さんはこのような症状が非常によく起こるというのが特徴です。食べ過ぎやストレスなどで、時々胃の調子が悪くなるという方がいらっしゃると思いますが、症状がたまに起こるという場合は機能性ディスペプシアにはあてはまりません。また、胃食道逆流症(GERD(ガード))を合併していることも多く、胃もたれ、胃の痛みと一緒に、胸やけ症状を感じている方も多いです。

どのようなことが原因で機能性ディスペプシアが起こるのでしょうか。image

機能性ディスペプシアはストレスが大きな原因となって起こります。症状は、胃もたれ(早期満腹感含む)と胃の痛みの2つのグループに分けることができ、ストレスを受けることで胃が動きにくくなる、膨らみにくくなるといった胃の運動機能異常が起こると、胃もたれの症状があらわれます。また、ストレスによって胃が胃酸の刺激に対して過敏になると胃痛が起こります。どの程度のストレスで機能性ディスペプシアが起こるかには個人差があります。幼児期の体験や体質、感染症による炎症などが関係していることが、最新の研究からわかってきています。
このほか、生活習慣やピロリ菌感染、飲酒、喫煙などが関与していることもわかっています。

どのくらいの患者さんがいるのでしょうか。image

色々な報告から推察すると、日本人の1~2割くらいが機能性ディスペプシアではないかと考えられています。機能性ディスペプシアにはストレスが非常に大きく関係していることがわかっていますから、今後ますます社会が複雑化してストレスが増えることで、患者数は増えていくのではないかと考えています。

診断と治療について教えてください。image

まず、症状とその頻度を確認します。胃もたれは1週間に2~3回以上、胃の痛みは1週間に1回以上継続して起こっている場合、機能性ディスペプシアの可能性が考えられます。その上で、内視鏡検査を行い胃がんや胃潰瘍など、他の疾患がないことが確認できれば、機能性ディスペプシアと診断します。特に、出血や貧血がある、体重が減ってきた、食べ物が飲み込みにくいなどの症状がある方、これまで一度も内視鏡検査を受けたことがない方には、必ず内視鏡検査を行います。
治療ではまず、胃の運動機能を改善するお薬や胃酸の分泌を抑えるお薬が使われます。このお薬で1ヵ月治療しても症状が改善しない場合には、胃の動きを良くする漢方薬やストレスへの対策として抗不安薬や抗うつ薬が使われることもあります。また、GERDを合併している場合にはプロトンポンプ阻害薬(PPI)が投与されます。
ピロリ菌に感染している場合には、機能性ディスペプシアに対する治療ということだけでなく、胃がんや胃潰瘍の発症を抑制するという意味で、ぜひ、除菌治療を受けていただきたいと思います。そのほか、生活習慣の改善として、食事や睡眠などに気を付けて規則正しい生活を送る、禁煙する、運動の習慣を持ってもらうことも大切です。

ストレスが大きな原因ということですが、どのように対処すればよいのでしょうか。image

ストレスをどうやってマネジメントするかという点は非常に大切です。ストレスを取り除くというよりは、この病気がストレスによるものだということを理解するだけでずいぶん違ってくると思います。実際に、ご自身の症状がストレスと関係があるということを理解する、あるいは、胃がんや胃潰瘍などの重大な病気ではないとわかるだけで症状がかなり改善する方がいらっしゃいます。私自身は、患者さんに「大変でしたね。大丈夫、よくなりますよ」と声をかけています。機能性ディスペプシアの根本はストレスですから、これを取り除くための患者さんと医師の信頼関係がとても大事だと思っています。

慢性的な胃もたれ、胃の痛みに悩む読者のみなさんへ、アドバイスをお願いします。image

機能性ディスペプシアの患者さんは、慢性的に症状があらわれるため、QOL(Quality Of Life:生活の質)が非常に大きく低下しています。これまでは、胃もたれや胃の痛みが続いている場合、ひとくくりに「慢性胃炎」と診断されるケースが多かったように思いますが、このような状態は機能性ディスペプシアという病気である可能性もあり、治療すべき状態であるという認識が広まってきています。
まずは医療機関を受診していただき、機能性ディスペプシアと診断されれば、この病気がストレスと深く関係しているということ、胃がんのように命に関わる病気ではないこと、そして治療によって症状が改善するということを理解していただくことが大切だと思います。また、治療を受ければ症状は改善しますが、再発する場合があることもご理解いただいた上で、治療に臨んでいただくとよいと思います。

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総監修 三輪 洋人(みわ ひろと)先生
兵庫医科大学 内科学 消化管科 主任教授
日本消化器病学会 機能性ディスペプシア診療ガイドライン委員会 作成委員長
日本内科学会認定内科医・指導医
日本消化器病学会専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
1982年鹿児島大学医学部卒業。1986年順天堂大学消化器内科助手、1995年同講師。
2004年より兵庫医科大学 内科学 消化管科 主任教授。
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