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VOICE  Vol.13

正しい知識で「内視鏡」と向き合う

日本が世界をリードする形で発展を続けてきた内視鏡。
その進化は目覚ましく、がんの早期発見・早期治療に大きく貢献しています。
今回は、この内視鏡について、検査から治療に関することまでを、
東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科/内視鏡科 主任教授の田尻久雄先生に伺いました。

日本には胃がん、食道がんの患者さんはどのくらいいるのでしょうか。

国際的ながん研究機関の2012年の調査では、人口10万人あたりのおおよその患者数は、胃がんが30人、食道がんが6人と報告されています。
日本では今、胃がんの大きな原因となっているピロリ菌の除菌を進めようという動きや、検診による胃がんの早期発見が進んでいますから、今後、胃がん患者さんの数や死亡率は減っていくと考えられますが、欧米に比べるとまだ胃がん罹患率の多い国と言えます。また、食道がんは男性高齢者に多いため、高齢化が進む日本では、今後、患者数の増えるがんとして注目されています。

内視鏡検査を受ける人は増えているのでしょうか。image

ここ10年ほどで実施件数は大幅に増えています。
様々な調査の結果から、食道や胃に対する内視鏡検査は年間1,000万件を超えると言われています。
内視鏡検査の目的の一つは、より早期の段階でがんを見つけることです。胃がんのリスクが増えてくる40歳以降の健康診断では、多くの場合内視鏡検査が健診項目に入っています。また、こういった健診以外では、みぞおちや上腹部の痛み、吐き気、胸やけ、胃もたれ、すぐにお腹がいっぱいになる感じ、つかえ感など、胃や食道の病気が疑われる症状がある場合に、内視鏡検査が行われることがあります。

内視鏡検査はどのように行われるのでしょうか。image

検査前日の夕食は午後9時までに軽くとり、それ以降は水以外の飲食は控えます。当日は、検査の15~30分前に胃の中をきれいにする薬(消泡剤)を飲み、喉の麻酔をします。この後に、胃の運動を止める薬や、検査の苦痛を少なくするための麻酔(鎮静剤)が使われることもあります。検査台でマウスピースを加えた後、検査が始まります。検査は5~10分ほどで終了しますが、鎮静剤を使った場合には検査終了後に30分程度の休養が必要になります。

内視鏡検査でどのようなことがわかるのでしょうか。image

患者さんが症状を訴えている場合にはまず、がんではないことを確かめるために内視鏡検査を行います。内視鏡で確認して、がんではなく逆流性食道炎や機能性ディスペプシアであった場合には、病気の程度を確認して、治療方針を検討します。がんが見つかった場合には、内視鏡を使ってがんの大きさや深さを確認し、内視鏡による切除で治療が可能かどうかなどを判断します。

今、内視鏡検査ではどのような技術が使われているのでしょうか。image

内視鏡による診断や治療は、医師と企業が協力して開発に取り組み、いかに患者さんへの負担を軽くするかを追求することで発展してきました。一般的な内視鏡検査は通常の光(白色光)で照らして食道や胃の粘膜を観察しますが、色素をかけて粘膜の凹凸を見やすくしてがんを見つけやすくするほか、現在では、波長を変えた光やレーザー光を使うことで粘膜表面や血管の様子を詳しく見ることができる方法が普及してきており、2~3mmのがんを発見することも可能になりました。また、画像を拡大する方法を組み合わせることで、さらに高い精度で診断できるようになっています。潰瘍やがんがどの程度の深さまで到達しているのかについては、超音波内視鏡で知ることができます。

どのような場合に内視鏡による治療が受けられるのでしょうか。image

内視鏡治療は、お腹に傷がつくこともありませんし、入院日数も比較的短いため、患者さんへの負担が少ない治療法です。治療の対象は、がんの場合、リンパへの転移の可能性が少ない粘膜の表面にとどまるもので、一括で切除できる大きさと部位にある早期がんであることが条件です。
具体的には担当の先生と相談の上決定されます。
最近の内視鏡治療の主流は、がんの下に生理食塩水などを入れて膨らませておき、内視鏡の先端から出したナイフでがんをはがし取るというESD(内視鏡的粘膜下層剥離術(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ))です。検査の時と同じように、喉への麻酔が行われるほか、鎮静剤が使われます。

がんの早期発見のために、読者のみなさんへ、アドバイスをお願いします。image

胃がん、食道がんは、早期に発見できれば、内視鏡による切除が可能で、治癒も望める病気です。しかし、早期の段階ではほとんど症状がなく、がんが進行してからあらわれることが多いため、早期発見のためには、定期的な検査が非常に大切です。
最近では、内視鏡検査時の苦痛を軽減するための鎮静法も進歩しており、以前のように苦しいものではなくなっています。患者さんへの負担が少ない内視鏡治療が可能な早期の段階でがんを発見するためにも、がんのリスクが高まる40歳代以降の方には、ぜひ、年に1度は内視鏡検査を受けていただきたいと思います。

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総監修 田尻 久雄(たじりひさお)先生
東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科/内視鏡科 主任教授、
日本消化器内視鏡学会理事長、日本成人病(生活習慣病)学会評議員・理事、
日本門脈圧亢進症学会評議員・監事、日本消化管学会代議員・理事、
日本カプセル内視鏡学会理事、NOTES研究会代表世話人
1976年北海道大学医学部卒業。
1981年国立がんセンター中央病院消化器科、1995年同センター東病院内視鏡部長を経て、2001年に東京慈恵会医科大学内視鏡科教授就任。2005年より東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科 主任教授。
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