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VOICE  Vol.14

正しい知識で「胸痛」と向き合う

胸の痛み(胸痛)は心臓や肺などの病気が原因となって起こるほか、消化器の病気が原因となって起こるものもあります。
今回は、胸痛がある場合に疑われる病気について、その中でも胃食道逆流症(GERD)を原因とする胸痛の特徴や診断の方法などを、
国立循環器病研究センター病院 心臓血管内科 部門長の安田聡先生に伺いました。

胸の痛み(胸痛)がある場合、どのような疾患が疑われるのでしょうか。

胸痛を起こす原因は心臓疾患をはじめとして、肺、胸壁(心臓と肺を取り囲む骨や筋肉、神経)、皮膚、消化管など多岐にわたります。生命にかかわるという意味で最も重大なものは心臓に関する疾患ですので、胸痛を訴えて来院された患者さんにはまず心臓由来の痛みであるのか否かを調べます。心筋梗塞の場合は吐き気や冷や汗を伴うほど激しい痛みが30分以上続くことが特徴です。胸全体が締め付けられるような感じ、心臓をわしづかみにされたような感じ、恐怖感を伴う痛みなどと表現されることもあります。大動脈解離の場合は痛みが背中にも出ることや痛みの場所が移動していくことが特徴で、心膜炎・心筋炎では発熱と息を吸うときに痛むことが特徴です。このほか、肺塞栓症や肺炎、気胸も気をつけなければならない病気です。
胸の痛みをきたす心臓・肺の病気

胸痛の原因を調べる検査にはどのようなものがありますか。image

まず心電図と胸部レントゲン検査を行います。この2つの検査は患者さんの体への負担が少ない検査で、入院せずに心臓や肺の状態を知ることができます。異常が認められれば、さらに詳しく調べるために、外来ではエコー検査やCT検査を追加したり、入院の上、冠動脈造影検査を行うこともあります。異常が見つからなかった場合は、心臓や肺以外の病気を考えていくということになります。

胸痛の原因が心臓や肺以外の場合、どのような病気が考えられるのでしょうか。image

心臓や肺の病気を除くと、胸痛の原因として最も頻度が高いのは胃食道逆流症(GERD)と言われています。GERDは胃酸を含む胃の内容物が食道に逆流することで、様々な症状を引き起こし、みぞおちの辺りから胸にかけてシクシクと痛む、しみるように痛むなどと表現される「胸痛」もその症状の中の一つです。心臓を原因とする場合に比べて痛みの持続時間が長く、食後や食間に1~2時間続くのが特徴です。

なぜ、GERDで胸の痛みが出るのでしょうか。image

まだ明確にわかっていないのですが、心臓や肺、食道は共通の神経を介して痛みを脳へと伝えているため、食道の痛みを脳が胸の痛みとして感じる可能性が考えられています。同じような現象として、心臓の痛みを歯の痛みや顎の痛みとして感じたりする「関連痛」が知られています。

GERDを原因とする胸痛の治療はどのように行われるのですか。image

心臓や肺の病気の可能性が低く、問診や内視鏡検査でGERDと診断された場合にはGERD治療を行います。いろいろな研究から、GERDを原因とする胸痛にはPPI(プロトンポンプ阻害薬)という胃酸の分泌を抑える薬が有効なことがわかっていますので、基本的にはPPIによる薬物治療を行います。

胸痛で医療機関を受診する場合の留意点など、読者の皆さんへアドバイスをお願いします。image

胸痛を感じられた場合には、まずは生命にかかわる循環器系の病気をしっかりと調べた上で、その他の病気を一つ一つ鑑別していく必要があります。診断においては痛みの性状が大切な情報になりますので、受診される際には、どのような時間帯に痛みが出やすいのか、どのくらいの運動量で痛みが出るのかなどを伝えて頂くとよいと思います。
また、胸痛の原因が心臓の病気とGERDの両方であったというように、複数の病気がオーバーラップしていることがあります。ある疾患に対して治療を一定期間受けても症状が残るような場合には、他の疾患の可能性についても総合病院等で相談・検査を受けて頂くことをおすすめしたいと思います。

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総監修 安田 聡(やすだ さとし)先生
国立循環器病研究センター病院 心臓血管内科 部門長、日本心臓病学会評議員、
日本性差医療学会評議員、日本心血管インターベンション治療学評議員・専門医、
日本内科学会認定医、日本循環器学会専門医、日本肺循環学会理事、
米国心臓協会(American Heart Association)
1987年東北大学医学部卒業。
1989年国立循環器病センター心臓内科レジデント、1994年米カリフォルニア大学サンディエゴ校への留学を経て、2006年より東北大学大学院循環器病態学講座助手。
2008年に東北大学大学院循環器内科学准教授、
2011年より国立循環器病研究センター病院 心臓血管内科 部門長。
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