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VOICE  Vol.15

正しい知識で「逆流性食道炎」と向き合う

逆流性食道炎は、食生活や環境の変化に伴って患者数が増えつつある消化器の病気で、
その症状は患者さんの生活の質(Quality of Life: QOL)に大きく影響することがわかっています。
今回は、逆流性食道炎がどのような病気なのか、そしてどのような治療が行われるのかについて、
群馬大学医学部附属病院 光学医療診療部 診療教授の草野元康先生に伺いました。

逆流性食道炎とはどのような病気でしょうか。

胃と食道のつなぎ目の締まっている部分(下部食道括約部)が何らかの原因で緩み、食べた物や飲み込んだ空気といった胃の内容物が食道に逆流することで、食道に炎症が起こる病気です。胃の内容物には胃酸が含まれるため、食道の粘膜を刺激して様々な症状が出るほか、逆流した空気(げっぷ)が食道を押し広げることでも症状が出ます。
胃内容物の逆流は、胃の働きが悪いことや食べ過ぎなどで胃の内容物が多い場合、強い咳、くしゃみをした時など腹圧が急に上がった場合に起こりやすくなります。また、肥満の方や、高齢者に多い背中の丸まった方も逆流しやすくなります。
日本でも食生活の欧米化やヘリコバクターピロリ感染率の低下、体重増加を背景に、患者さんの数は増えています。

どのような症状が出るのでしょうか。image

代表的な症状は胸やけと呑酸(酸っぱいものが上がってくる感じ)です。胸やけとは、喉元からみぞおちにかけての焼けるような感じのことですが、患者さんによってはむかむかする、気持ちが悪いと表現されることもあります。症状は空腹のときにはあまり出ず、前屈みの作業をした時や脂っこいものを食べた後、食べ過ぎた時などに出やすくなります。また、お腹が張る、胃がもたれる、胃が痛いといった腹部の症状を一緒に訴えられることも多いです。

逆流性食道炎の症状があると、日常生活にどんな支障が出るのですか。image

逆流性食道炎の患者さんでは、狭心症や十二指腸潰瘍の患者さんよりもQOLが低下しているという報告があります。食べると症状が出てしまうため、患者さんの食べたいという欲求は大きく障害されますが、食べることは生きていく上では欠かせない行為ですから、これはとてもつらいことです。また、昼間の症状がストレスとなって夜十分に眠れない、あるいは就寝時の逆流の量が多いことが睡眠障害の原因になることもあります。このほかにも、症状によって仕事の能率が下がるという報告もあり、日常生活内の様々な活動に影響を及ぼすことがわかっています。

どのような治療をするのですか。image

QOL低下の原因となっている症状を取るため、また炎症の程度の重い人では合併症の予防のために、生活習慣の改善やお薬による治療を行います。
患者さんからよく「何を食べればいいですか?」という質問を受けますが、「食べてみて胸やけするものは避けるようにしてください」とお答えしています。食べ物に対して過度に神経質になるよりも、食べ過ぎない(腹八分)、食べてすぐに就寝しないといったことをできる範囲でやっていただき、処方されたお薬をきちんと飲んでいただくことが大切だと思います。また、お酒を飲み過ぎない、禁煙する、前屈みになるような作業をしないといったこともよいでしょう。お薬による治療では、胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬(PPI)などの薬剤が使われます。

PPIとはどのようなお薬なのでしょうか。image

胃酸は色々な刺激によって分泌が促進されますが、最終的にはプロトンポンプを通って胃の中に分泌されます。PPIはプロトンポンプの働きを止めることで胃酸の分泌を抑えるお薬で、日本では20年以上、欧米では30年近く使われています。発売当初は、胃酸を止めることで消化が十分に行えない、胃酸による殺菌力が低下してしまう、ポリープが形成されるといったことが心配されましたが、長い使用経験の中でそのような心配は払拭され、有用性の高い薬だということがわかっています。
さらにPPIは症状を取り去る上でも優れた効果を発揮してくれるため、QOLの改善も期待できます。逆流性食道炎の症状は、胸の痛みとして感じられる場合があります。胸痛のため循環器内科を受診した患者さんが、内視鏡検査により逆流性食道炎だということがわかり、PPIの処方によって改善するということもあります。

逆流性食道炎を疑う症状をお持ちの読者の皆さんへアドバイスをお願いします。image

逆流性食道炎の症状は食べたいという欲求を障害するだけでなく、様々な日常生活に影響して患者さんのQOLを低下させます。胸やけ、呑酸など、逆流性食道炎の症状を感じたら、一度は消化器専門医を受診して、内視鏡検査を含めて総合的に診断と治療をしてもらうことをおすすめします。
また、治療を受ければ症状は改善しますが、お薬を止めた場合などに再発するケースがあるということをご理解いただき、治療に臨んでいただければと思います。

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総監修 草野 元康(くさの もとやす)先生
群馬大学医学部附属病院 光学医療診療部 診療教授、日本消化器病学会 評議員、
日本消化器内視鏡学会 評議員、日本食道学会 理事、
胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン作成委員、
機能性ディスペプシア(FD)診療ガイドライン作成副委員長
1978年群馬大学医学部卒業。
1984年桐生厚生総合病院内科医長。
1992年米国Medical College of Wisconsin留学を経て、1998年群馬大学医学部附属病院第一内科講師。
2013年より群馬大学医学部附属病院光学医療診療部診療教授。
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