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VOICE Vol.21

正しい知識で「逆流性食道炎」と向き合う

胸やけなどの症状のために、患者さんの日常生活に様々な影響をおよぼす逆流性食道炎。
生活の質に大きく関係する睡眠障害との関連も明らかになってきています。
今回は、逆流性食道炎の原因と睡眠へ及ぼす影響、生活習慣の改善を含む治療の実際について、
大阪市立大学大学院医学研究科 消化器内科学教授の藤原靖弘先生にお話を伺いました。

逆流性食道炎とはどのような病気なのでしょうか?

胃酸を含む胃の内容物が食道へ逆流することによって不快な症状などを引き起こす疾患群をGERD(ガード)と呼んでおり、その中でも逆流によって食道の粘膜に傷ができたものを逆流性食道炎といいます。胸が熱い感じになる「胸やけ」、酸っぱいもの、胃の中身が逆流する感じがする「呑酸」が逆流性食道炎の典型的な症状です。

なぜ逆流が起こるのでしょうか?image

食道には胃との境目に下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)と呼ばれるものがあり、通常は胃の内容物が逆流しないように一定の圧で締め付けています。食べ物を飲み込む時は下部食道括約筋が緩むことで嚥下(えんげ) しますが、食べ物の嚥下に関係なく下部食道括約筋が緩んでしまった時に逆流が起こります。高脂肪食の摂取、食べ過ぎや喫煙、腹圧のかかりやすい腹囲の大きい人や肥満体型は下部食道括約筋が緩む原因といわれており、これらは最近日本人に増えているライフスタイルの欧米化が誘因となっているため、逆流性食道炎の患者さんの数は日本においても1990年代後半から増えてきています 1)。

日常生活にどんな影響がありますか?image

胸やけや呑酸といった症状のせいで元気が出ない、食事が楽しめないなど、日常生活には色々な影響があらわれます。睡眠障害もその一つで、私たちの調査ではGERD患者さんの約半数に何らかの睡眠障害があることがわかっています2)。寝ている途中で目が覚める、ぐっすり眠れない、寝つきが悪いなど睡眠障害のパターンは様々ですが、睡眠障害がある逆流性食道炎の患者さんでは、睡眠障害がない患者さんに比べて胸やけや呑酸の症状の程度が強かったり、生活の質がより低下していることもわかっています3)。こうした睡眠障害によって日中の眠気が引き起こされ、職場で眠くなるといったことから労働生産性が低下してしまうこともあります。

どうして睡眠障害が起こるのでしょうか?image

寝返りをうつなど実際に意識されない覚醒があった時に下部食道括約筋が緩んで逆流が起こるといわれていますが、逆流性食道炎と睡眠障害の関係はとても複雑で、どちらか一方だけが原因となっているわけではありません。お互いが影響しあって逆流性食道炎や睡眠障害をさらに悪化させるような悪循環を形成していることがわかっています。例えば寝つきの悪い入眠障害の患者さんでは、夜遅い時間に食事をしてすぐに就寝することが多く、ベッドで横になった時にちょうど胃酸が活発に分泌されて逆流しやすくなるため、症状が出て入眠できないということがあります。

治療について教えてください。image

逆流性食道炎の治療の目標は胸やけや呑酸などの症状を取り去ることです。胃酸の分泌をしっかりと抑える薬を飲んでもらうことが治療の基本になりますが、生活習慣を改善していただくこともあります。食生活で一番大事なことは食べ過ぎないということです。チョコレートや天ぷらなど、逆流を起こしやすくする食品というものがいくつかあるのですが、そのような食品は患者さんの好物であることが多く、我慢することで症状は改善しても、好きなものが食べられないことで生活の質を落としてしまうことになります。「まったく食べない」ということでなく、食べる量を減らすことが大切だと思います。その他、肥満の方にはダイエットをしていただくようにしています。
また、睡眠障害がある逆流性食道炎の患者さんでは、夕食は就寝のなるべく3時間前に終わらせるようにしてもらう、あるいは仕事などで早めの食事が無理な場合には朝食か昼食をメインにして夕食は軽くしてもらうとよいと思います。眠る時に枕を2つ程重ねて、頭を上げて寝てもらうという方法も有用です。

胸やけや呑酸の症状でお困りの読者のみなさんへアドバイスをお願いします。image

逆流性食道炎は薬物治療で症状が改善する可能性があります。治療を受けていただくことで、好きな食べ物を我慢したり、症状のために生活の質を落とすことなく普段どおりの日常生活が送れるようになる場合もあります。あまり我慢を続けずに、ぜひ一度医療機関を受診していただきたいと思います。
また、症状が長く続いている場合には、他の病気の可能性を診断するためにも、医療機関で内視鏡検査などの詳しい検査を受けていただくことをおすすめします。

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総監修 藤原 靖弘 (ふじわら やすひろ)先生
大阪市立大学大学院医学研究科 消化器内科学 教授、
日本内科学会(指導医・総合内科専門医)、
日本消化器病学会(指導医・専門医、評議員)、
日本消化器内視鏡学会(指導医・専門医、評議員)、
日本消化管学会、日本癌学会、米国消化器病学会
1988年大阪市立大学医学部卒業。
1995年同大学大学院医学研究科博士課程修了、1995年同大学助手、2002年講師、2007年准教授、
2016年より現職。
1) Fujiwara Y, et al. J Gastroenterol 44: 518-534, 2009
2) Fujiwara Y, et al. Digestion 81: 135-141, 2010
3) Fujiwara Y, et al. J Gastroenterol 47: 760-769, 2012
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